学生の思想を読む

国ではなく国語に住む我々の、思考の差異を追求します。

個人の適応要因

個人の適応要因についてそれぞれの因子における例を挙げることとする。この個人の適応要因については、筆者が今年の3月に中華人民共和国の上海へ行った経験を元に進める。自己志向的因子に関して、筆者が上海で遭遇した交通の便でのトラブルを元に関連させる。上海をはじめとする都市において気を付けるべき点として、スリやぼったくり、そして飲料水の購入が不可欠であるとされている。筆者は現地において人混みに揉まれる場所には極力近づかないように、あるいは警戒しながら行動した。もちろん飲料水の購入も怠ることはなかった。しかし、駅の場所がわからずにいた私に話しかけてきた男性に私の目的地までの案内を頼んだ時や、駅構内で目的地までの金銭が足りないと話しかけてきた女性に相当な額の金銭を要求されたことがある。彼らは日本人あるいは観光客の慢心や善意に漬け込んで金銭を要求するタイプの寸借詐欺を行っている人たちである。最も、これらの犯罪は日本でも日常的に起こっているもので何ら珍しいものではないが、筆者はこういった行為に当事者として遭遇するのは初めてであった。これまでの経験や知識に限らず、自己に起こり得る危険や脅威を完全に予測することは不可能に近い。紙の上で学んだことに対する自分の答えと、実際に自分の身に起きた時の自分の行動や対処は別のものになりかねない。しかし、現実世界での行動を繰り返し、幾多の経験をするうちに、ここで求められる洗練された行動を手に入れられる機会を得られることは言うまでもない他者意向的因子においても、現地の民間人との出会いを元に進める。筆者は祖国を出国する前には、現地の鉄道網を簡単に調べた程度で、空港からホテルまでの詳しいルートを調べることをしなかった。今となっては非常に恐ろしい行動をしていたが、結果的には現地の民間人に助けられる幸運に恵まれた。現地についてから空港始発のマグレブリニアモーターカー)に乗る予定であった。空港に到着した時刻が始発前であったが、当時はそのことを失念しており、空港内の案内板に従って駅に向かった。駅に向かう途中の通路で一人の男性に声を掛けられたとき、当然警戒をしつつも話を聞いてみるとまだ鉄道は動いていない、目的地まで車で送ると言われた。今思い返してもなぜ私は無事に祖国へ帰国できたのか不思議でしかない。結局その男の車に乗り、ホテル付近まで送迎をしてもらった。道中、お互いにスマートフォンの翻訳アプリケーションを用いて英語と上海語でのコミュニケーションが行われた。男から聞いたのは中国国内での企業買収・倒産の激化や日本の自動車産業の進出は上海でも目覚ましいということなどである。筆者は特段、中国の経済情勢について詳しいわけではないが、この男が言っていたことは上海に住む人間の生の声であり、政府発表やマスコミを通じて知る情報とは異なる。これまでは物騒な話題が続いたが、平和的な出会いももちろんあった。ホテルに到着後、フロントの女性に付近の美味しい料理店について尋ねたところ、この付近には無いとの情報を得た。美味しい食事を求め遠出をする動機を得られたのである。最後に知覚志向的因子として挙げたいのは、筆者の上海滞在最終日のことである。自分の目的地とするとある店に向かう際、地図上の方角と実際の方角が不明瞭となるときがあった。そんなときに、自分の鞄の中に入っていた方位磁石が役立った。知覚志向的因子の項において、地図というのが物理的な意味での地図ではないにしろ、未開の地で自分が頼りにできる何らかのリスクヘッジを用意できていたことをここで挙げたい。

 

 

 次に仕事の適応要因について例を挙げる。ここでは筆者の現在在籍しているアルバイト先であるマクドナルド株式会社での経験を元に進める。まず初めに仕事上の裁量度について、マクドナルドでのアルバイトの役職と合わせる。マクドナルドではアルバイトとは呼ばずにクルーと呼ばれるが、そのクルーにも能力に応じて様々な役職が存在する。通常のクルーの他に新規のクルーに対して業務を教える役割を持つトレーナー、クレーム対応や資材の発注業務を行うスウィングマネージャーなどがある。ここで言いたいことは、クルーから役職が上がるにつれ、店内での裁量が大きくなることである。初めのうちは業務を覚えることでいっぱいの新人クルーでも、業務に一通り慣れてくると裁量を求めるようになる。通常はそのころには上の役職へ昇格するチャンスが回ってくるのだが、私の在籍している店舗はメンバーの入れ替わりのスパンが上の役職になるほど長い。つまりなかなか昇格のチャンスが回ってこないのである。私と仲の良いマネージャーは客席とカウンター業務での裁量をほとんど私に任せてくる。その時店舗にいるクルーの能力を見て、適材適所のポジションに就いてもらうことで、業務の上でのミスやお客様への商品の提供時間を短縮することが可能になる。仕事の多様性について、基本的に店舗内での指示を出すことはマネージャーが行う。しかし、この指示が不明確なものや、そういった指示を多用するマネージャーのいる時間帯は店舗内でのミスが多い。商品の受け渡しをする前の確認一つをとっても、単に入れ忘れをしていないかどうかを尋ねるよりも、どのコンディメントが入っているかを確認するといった具体的な聞き方をするマネージャーは圧倒的にミスが少ない。最後に役割葛藤についても主にマネージャーの言動が大きな要因となることが多い。クルーの昇格について、それぞれの業務に対するある一定以上の能力を求められる場面がある。あるクルーを昇格させることによって良い影響を受けるマネージャーやトレーナーがいるとすれば、そうでない人もいる。そこにはあくまで個人的な好き嫌いも存在するが、基本的には勤務する時間帯によって同じポジションでも動き方が異なることに原因がある。また、昼の時間に終わらない業務や朝の時間にやれない業務は夜の閉店後の作業として任されることがある。閉店時間に在籍しているクルーは能力値もそれほど低くなく、かといって任された仕事を放棄するような性格でもない。それが仇となり、困ったら閉店業務に任せてしまえという風潮が少しある。それだけ期待されているともとらえられるが、閉店業務を対応しているマネージャーはそのことに不服を持っており、純粋な期待というものではないと言えるだろう。