学生の思想を読む

国ではなく国語に住む我々の、思考の差異を追求します。

映画「マイ・フェア・レディ」を見て

期待に応えることができた時の笑顔は、忘れられないものになる。マイフェアレディでイライザが受けていた期待に応えられたときの喜び、笑顔は登場人物の世界を変えた。イライザはもちろん、ヒギンズ教授に対しても喜ばしいことであっただろう。その後にイライザは教授の目的に利用されたことに落胆するが、結果としてその教授をも上回る成長を見せた。有名な言葉によって教授が諭される立場に逆転したことが根拠である。従藍而青という言葉があるが、これには、子が師を越える成長を見せるという意味である。今回の事例ではこの従藍而青に師の期待が加わったものであるが、ヒギンズにとっても自分を越されるという、自身にとっての常識を覆されることの学びとなり、イライザの笑顔は印象深く忘れられないものとなったはずだと筆者は考える。
 ヒギンズにとって、イライザが自分を超えるとは思っていなかったことが、実現したことにより、ヒギンズもまた成長した。これは人対人のみならず人対組織、組織対人にも応用できる。組織から期待を発破することで個人は成長し、個人が成長することで組織にも変化が現れる。しかし、ただ個人を成長させるだけでは組織であるメリットも消失し、効率化を求めて組織化したはずが逆に細分化されかねない。そこで、組織の目標設定は相互作用を考慮して行う必要がある。ただ成長させるだけでなく、その先にどんな作用が起こるのか。組織にも個人にも益が働くことで信頼が構築できる。この信頼を維持してゆくためには、最初に設定する目標は連続的、継続的なものである必要がある。
 筆者が高校時代に所属していた店舗経営部と呼ばれる部活は、筆者が最終学年時に当時の1、2年生の集まりが悪い時期があった。仲がよかった当時の副部長は特にそれを危惧しており、さまざまな理由から役職に就いていなかった筆者は特に気に留めていなかった。筆者は人手不足になれど、いずれ事態は収束するだろうとの先見を見越して後輩とは普段通り接していた。店舗経営部という部活は全国でも極めて珍しい部活で、普通科高校にはまず存在しない。筆者が通学していた高校は商業科高校で、卒業生の半数は就職、残りの大半が専門学校と短期大学を占め、4年制の大学へ進学する生徒は少なかった。店舗経営部という名前の付加価値はとても高く、就職と進学どちらでも応用の利くブランドになる。そのため筆者は、そのような付加価値を自覚している後輩達が、店舗経営部での活動の重要性に気づかないはずがないとの期待を持っていた。結果として後輩たちは少しずつ活動を積極的に行ってゆくようになり、後輩たちへ引継ぎを終えた筆者の学年は安心して卒業することができた。
 従藍而青、これは筆者の名前の由来でもある。かつての後輩たちが自分たちを超える成長を望む一方で、こちらはこちらで負けていられないという考えを持っている。それと同じように、自分の親をも超える躍進を期待する。