学生の思想を読む

国ではなく国語に住む我々の、思考の差異を追求します。

ピグマリオンマネジメント論文を読んで

自己実現力は良い扱われ方で最大効率を発揮する。メトロポリタン生命の記録にあるスーパー・スタッフは、優秀な6人のスタッフを優秀なマネジャーのもとで一つの組織単位として活用したものである。このスタッフ組織の団結力はいやがうえでも高まり、業績も向上した。ここでわかることは、しかるべき能力を備えた人間は、それをひとつのグループにまとめると通常の業績達成能力を上回る能力を発揮することが出来る。なぜならば、その能力の劣った人間のせいで引き起こされる問題から解放されるからである。対して、能力の劣った人間と、同じく能力の劣ったマネジャーを集めた組織の業績は悪化した。ところが、平均的なグループの業績は向上した。その理由として本文では、おそらくこの平均的なグループのアシスタント・マネージャーが、スーパー・スタッフのアシスタント・マネージャーよりも能力が劣っているとか、最優秀グループの営業職員のほうが優れた能力を備えているとかなどとは、どうしても思いたくなかったからだろう。としている。平均的なマネジャーは、自身のルサンチマン的な思想を自身のスタッフにも力説し、スーパー・スタッフを打ち負かすことに発破をかけたのである。その結果、売上高ではスーパー・スタッフのグループに追いつかなかったものの、労働生産性の増加率は打ち負かすことが出来たのである。自身の強い思想をスタッフへ植え付け、優れた実績を達成できるという相互の期待感を醸成することで、このような成長を実現することが出来たのである。

自己実現力はマネジャーによって対の方向に志向する。スタッフはマネジャーより、有能なスタッフとして扱われるとそのイメージにふさわしい行動を実現しようとする。反対にマネジャーがスタッフを成長の見込み無し、と判断して低い期待を持って接した場合はスタッフの生産性も悪くなる。スタッフはそれなりの期待を感じることはあっても、ある一定の地点で成長は頭打ちになる。マネジャーの期待によって成長の可否が変わってしまうことは、まさにマネジャーの自己実現力の効用がもたらすものであるといえる。もっとも、マネジャーはスタッフに対しての低い期待を面と向かって表すようなことがないとしても、そのような内面の思想はスタッフに伝わってしまうのである。些細なことからスタッフへ伝わってしまった期待の薄さは、作業のモチベーションやメンタルに大きく影響し、ひいては生産性の減少をもたらす。つまり、マネジャーの期待をチームの成果に結びつけるためには、期待の現実性や信頼感、物事をポジティブに捉える考え方が重要なファクターを占めていることがわかる。

今回取り扱ったピグマリオン・マネジメントと類似する“引き寄せの法則”や“思考は現実化する”であるような自己啓発物は個人的に苦手とする分野であるが、幾多の情報が蔓延する情報化社会の中で、自己を確立してゆくためにはこのような思考法は無視できないものであると改めて再確認させられた。