学生の思想を読む

国ではなく国語に住む我々の、思考の差異を追求します。

学生の課題忘れにおける言い訳

 

 新コロの影響によりほとんどの大学生はZOOMなどによるオンライン講義の受講が余儀なくされた。出席が事実上取れないことになったので、講師側は課題の提出の有無によって学生の成績をつける。講義によっては、学生の成績は毎回の講義後の課題提出のみによってつけられることとなるが、想像力のない学生はその課題の重さに気づかずに提出を忘れる。 

 ところで、ZOOMで話す側になった者はわかると思うが、オンラインでの会話では対面上の会話と違って聞き手の相槌などの反応が無いため、話し手に虚無感が生まれる。(現実の会話のようなタイミングで相槌を打つと、通話上で話が被るために双方が聞きづらい。)これは講師にとっても同じようで、いくつかの講師はその講義中にその虚無感を埋めるため、なるべく学生に発言を求めるのが、現在のオンライン講義の現状である。 

 オンライン講義で求められる発言は、提出された課題の発表が主である。しかし学生の状況にとって、またその環境にとってその発表は望ましいものではない。それは課題の提出そのものを済ませていた場合でも起こりうることで、主な要因は①リアルタイム性のある行動を取りにくい。②受講環境が整っていない。③デジタルディバイドの有無。という三点である。 

 この三点の要因とともにその状況で行われる学生の言い訳を紹介する。 

 

①リアルタイム性のある行動を取りにくい 

 オンライン講義によって都内(大学付近)に下宿している学生は、その必要がなくなったことから実家に帰省していることが多い。またオンラインという特性上どこでも受講が出来るため、講義時間であっても学生が家以外の環境にいることもある。そのため、講義中に提出した課題の発表を急遽求められてしまうと、そのデータを参照できない学生にとっては困る。以下の例文は、オンライン講義が始まった当初に頻出して見られた発言である。 

 例:「実家(現在いる場所)にPC(課題データ)がありません。」 

 理系・情報系の学生にとっては信じられないかもしれないが、一般の私文学生にとってGoogleDriveなどのクラウドサービスはそこまで認知・利用されていない。これは③にも当てはまる発言にもとれるが、Googleに親を殺された学生は未だにフラッシュメモリでデータのやり取りをしているため、それを実家あるいは居住地区に忘れた学生がクラウドという概念を知ったところで後の祭りである。 

 

②受講環境が整っていない 

 二番目はハードの問題で、デジタルディバイド以前の問題である。電子機器を水につけるなという教訓は、ゲーム機器をファミコンと呼称する世代以上でも理解しているものだと思っていたが、ゆとり教育終結によりその教訓は崩落したらしい。 

 例:「PCが水没しました。」 

 この手の発言をする学生はデータのバックアップをしていないことが多く、クラウドサービスはおろかバックアップという概念を知らない可能性が高い。そのためそもそも劣悪な環境で受講しているのではないかと危惧した。オンライン講義を求める側は早急にこの学生にスタバの飲料をこぼしても壊れない防水PCを支給してやってほしい。 

 

デジタルディバイドの有無 

 最後は筆者が巧妙だと感じ、この発言の出自の観測によってこのレポートを書くに起因した発言である。 

 例:「レポートを変な保存にしてしまって途中で終わっている。」 

 課題の発表をするためにワードファイルを開いたのだろう。筆者が推測するに、この学生は毎回のレポートファイルを「上書き保存」ではなく「名前を付けて保存」を選択している。そのため、学生のデスクトップには「レポートファイル」「レポートファイル(1)」「レポートファイル(最新)」…といった具合になっているものと思われる。マイクロソフトの提供するOnedriveの自動更新機能を使えば、このような問題は解決するだろう。マイクロソフト社はこのような学生に向けてマーケティング活動を始めるチャンスだ。 

 驚くべきことに、この学生は途中まで書かれた(とされている)レポートを2、3行読み、そこで発表をやめることによって発表したことになったのである。発表そのものが怠惰に感じる学生はぜひともこの手法を見習ってもらいたい。きわめてハイブリッドな手法を目の当たりにした筆者は、しばらく開いた口が塞がらなかった。オンライン講義ではこのような講師VS学生のライアーゲームのような駆け引きが毎時行われている。自分がこれまで見たことのない、真面目にやっている学生がバカを見るような仕組みを、これからも楽しみにしたいと思う。