学生の思想を読む

国ではなく国語に住む我々の、思考の差異を追求します。

第1回 授業概要 情報社会論の概要とコンピュータの歴史

学んだこと
 かつて航海技術に用いられた三角関数では、人間の手計算による数表の間違いが頻出していた。六分儀による現在位置の把握の間違いは、航海の失敗につながるだけでなく、船員の命に関わることになる。数表の計算とチェックは複数人体制だったが、チェック側の人間の計算間違い、転記の間違い、印刷時の間違いなど様々な要因が混同していた。初期のコンピュータではパンチカードによるコンピュータ制御を行っていたが、時間がかかり、運用には莫大なコストを強いられていた。
 サイエンスZEROスーパーコンピューター京」
神戸の理化学研究所、計算科学研究機構にはスーパーコンピューター京が運用されている。864台のラックそれぞれにシステムボードが24枚、8万以上のCPUがあるが、それぞれがいかにスムーズに情報のやり取りをするかがカギとなっている。そのカギはCPU同士の接続を直列ではなく交差する方法により、効率的な伝達を実現している。
 阪神淡路大震災の経験から、築年数・経年劣化・水道管などのデータをもとに街の地震被害のシミュレーションを京で行えるようになった。南海トラフを予測して避難計画の検討に役立てようとしている。京では、避難民一人一人を想定したパーティクルに年齢・運動能力・歩くスピード、見て考えて動く機能を備えることが出来る。
 これらの計算のためにスパコンが必要であり、5つの戦略分野で成果が出ている。防災減災・物質エネルギー・ものづくり・医療・宇宙の5つの分野のうち、防災分野では、台風がいつ発生するかもわかるようになると言われており、天気予報に革命を起こすであろうと言われている。
 ものづくり分野での空力シミュレーションでは、車にかかる空気抵抗の数値を従来までの数千万から二十億の単位まで増加させた細部計算が可能になっている。この計算を活用することでより空気抵抗に優れた車体を開発し、燃費に良い車を製造開発することが可能となる。
 東京大学が開発している心臓シミュレーションUT-Heartは、体内での動きを患者一人一人レベルで忠実に再現することが可能である。先天性の心疾患は対応が難しく、対応は医師の中でも判断がわかれるが、シミュレーションで科学的に理にかなった手術がわかるようになった。
従来行っていた負担の大きい術式だと、将来心不全の原因になることもあるため、その予防にもつながった。
 創薬分野ではがん細胞の増殖を抑えるものを作る研究が進められている。がん細胞のタンパク質とそれを活性化させる化合物はカギと鍵穴の関係に例えられる。がん細胞の活性化を抑えるためのカギを見つけることが創薬分野に注目されているが、そのようなカギは1万個以上あることがザラであるため、研究には莫大な予算がかかる。新薬の開発は10年の年月と1000億円以上の予算をかけて行われるとされており、さらに従来のコンピュータシミュレーションでは成功率が5%とされていた。京を活用することで50%に上昇する事例も上がっており、スーパーコンピューターの精度は様々な便益をもたらす。
 2020年ポスト京によってさらに高度な医療のシミュレーションに近づける
ポスト京の名前はどのようにつけるか決まっていない。


考察
 スパコン京が世界一位ではなくなり「二位じゃだめなのか」という意見が出たことに対して、地震大国の日本には必要なものであると実感した。地震以外にも様々な分野で活かせる、活かすべき機会が日本にはたくさんあると思った。その大きな括りが、5つの戦略分野である。京の時代に上記のような言説が飛び交ったために、ポスト京、富岳においても、なぜ一位である必要があるのかを考えて行けるべきだと感じている。情報化社会において高度な技術を持つことは重要であるが、その高度な技術を何のために持っているのかを考えてゆくことを最も大切にしていきたい。