中東の経済体制
1.中東の経済
中東の国々が貧しいのか、富んでいるのか。その問いの答えは国によって異なる。答えを分ける事情は①石油、②人口の二つによる。
ペルシャ湾岸の八か国(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、バーレーン、クウェートなど)は石油を算出する富んだ国であると言える。特にクウェートはほぼ完全な福祉国家である。
対してレバノン、モロッコ、イエメン(旧:南イエメン)には石油が無い。さらにエジプト、チュニジア、スーダンは人口増加と赤字財政、食糧不足に悩まされている。
この格差の解消のために、石油産出国の組織OPEC(石油輸出国機構)とOAPEC(アラブ石油輸出国機構)がある。OPECにはアラブ以外の他にアジア、アフリカ、中南米の石油産出国が加盟している。OAPECの加盟国はクウェート、サウジアラビア、リビア、カタール、バーレーン、アラブ首長国連邦、アルジェリア、イラク、シリア、エジプトの10か国である。以前までチュニジアが加盟していたが、アラブの春を始めとする様々な事情により現在は脱退している。
中東はアラブ世界、イラン世界、トルコ世界という三つの地域から成り立っている。このうち、イラン世界とトルコ世界を合わせて、非アラブ世界と呼ぶこともある。中東のアラブ以外の産油国としてはイランとトルコがある。オマーンと北イエメンは石油が出るが、産出量はほとんど無いに等しい。
これらの産油国の中で、自国の需要をまかない、さらに輸出する余力があり、石油関連収入で国家財政を全面的に支えられるだけの生産力を持つ国はサウジアラビア、クウェート、カタール、バーレーン、アラブ首長国連邦である。
したがって、産油国と非産油国の経済格差は非常に大きく、一人当たりのGDPを比べると、その差は歴然である。産油国は世界でもトップクラスのGDPを誇るが、非産油国は極めて貧しい。さらにアフガニスタン、イラク、チュニジアなどは紛争やジャスミン革命というアラブの春によってGDPが急速に落ち込んだ。
これらの経済格差を是正するためにアラブの国同士、イスラムの国同士で、豊かな産油国から貧しい国へ経済援助が行われた。逆に貧しい国から豊かな国へは出稼ぎ労働者としての送り出しが行われた。しかし豊かな国とは1970年代に急速に石油収入が増えたことが原因である。それがかえって国内に社会的不安を生み出すことになった。