学生の思想を読む

国ではなく国語に住む我々の、思考の差異を追求します。

③ルイ・ヴィトンのバッグについて

課題 

次の事例を基に、問いかけについて各自の答えを導いてください。
<事例1>日本では、クリスマスイブの夜や子供の誕生日には家族そろってデコレーションケーキを食べます。ほかの日にはあまりデコレーションケーキは食べません。
<事例2>恋人の誕生日にプレゼントを送ります。他の日に送ったら間が抜けてしまいます。恋人にはどうしても誕生日にプレゼントを贈りたいものです。
<事例3>日本の正月にはおせち料理を食べます。例えば、お正月以外には数の子や黒豆やお雑煮はあまり食べません。正月に食べるもののようです。
<問いかけ>日本の女性のルイ・ヴィトンのバッグの所有率はとても高いと言えます。仮にルイ・ヴィトンのバッグが10万円で販売されていました(商品A)。もう一つ、ルイ・ヴィトンの工房の職人が作った全く同じ素材で無地のバッグが10万円で販売されていました(商品B)。あなたはどちらのバッグを購入しますか。その消費行動はどのように説明できますか。
※よくある誤謬・・・「記号論」的思考で述べることは良いと思いますが、ブランドを「記号」と読み替える論旨は間違いです。

 

本文

課題の件、考察結果に基づき、以下の通り報告します。

 

 

共通の認識による共感を重視することで商品Aを購入する可能性が高い

 

 

  • 事例1からは、特定の日を祝うという象徴や意識づけのためにケーキを食べる習慣が出来たと言える。不二家が発端となり、お祝いの日にはケーキを食べようというイメージ戦略の結果である。日本においてケーキと聞いた際に、ショートケーキがデフォルトイメージとなっているのはその手軽さを宣伝したためである。
  • 事例2からは、対象の誕生日を祝う側が祝うことを、印象付けさせる目的があると言える。筆者のこれまでの経験から、人間の心理的期待の継続性はその人間に関わる時間や印象に求められる。恋愛工学的には、仮に恋人のいる人間が誕生日にその恋人から祝われなかった場合、その誕生日を自分が祝い、自分に対する印象を高めることで相手から略奪出来る可能性が高まると言える。逆に言えば恋人のパーソナリティを印象強く意識することは恋人関係の防衛手段となる。印象付けによって、自己を特別視してもらうことで、その人以外の選択肢を除外させる効果がある。
  • 事例3からは、食糧産業の消費の落ち込む冬季に安定した収益を与える効果があると考えられる。年明けの厳しい寒さでも日持ちのする食事を、各家庭にまとめて準備させることで、まとまった生産と消費の循環が成り立つ。また、販売者側は食材一つ一つに含まれている栄養素の効果を宣伝している。正月はめでたいものであるというイメージ戦略との紐づけによって、行事好きな日本人の参加意欲を煽っていると言える。
  • 以上から、日本における行事で用いられる定番の消費活動は、商業によるイメージ戦略の結末であると言えることがわかる。その背景には、みんながまとまった行動を取る国民性によって支えられて成り立つものである。みんながやっているから、といった理由で何となく行動をする共感力を逆手に、日本のマーケティングは成り立っている。