学生の思想を読む

国ではなく国語に住む我々の、思考の差異を追求します。

中間レポート 1.課題図書レポート

【カテゴリB】未来・社会を知る

No.23 里山資本主義-日本経済は「安心の原理で動く」

藻谷浩介 NHK広島取材班

 PART1

 経済に思考を翻弄される人たちがいる。それが決して悪いと主張するのではなく、あくまでその事実を突きつけるのみである。ブータンのような生活を行えというわけでもない。経済の在り方は、生産者と消費者がお互いの財を交易し、市場を循環させることである。現代における経済とは、主として金融や権利などの目に見えない無形資産を扱うことが多い。現実に投資ファンドたちを釘付けにしているのは証券を初めとする金融商品である。2008年に起きたリーマンショックまでは無形の商品に対して理想を築き上げてきた。そして忘れもしない2011年まで我々は既存のインフラに対しても理想を押し付けてきた。朝じゃ口を捻れば当たり前のように清潔な水が出る。生活必需品や食料は24時間手に入る。これらは日本人だけでなく、今では世界中に浸透し始めているように思える。その理想的なように思える生活は、自然災害で簡単に崩壊した。貸し倒れのリスクさえ商品として売り出したことが仇となり幾多の国家財政をも崩壊させた。これらの原因は依存にある。晴耕雨読の生き方こそ、人類が求めるべき理想的な豊かさではないのか。古来より行われてきた里山の活用から得られる恩恵を今こそ求めるべきだ。利器を使うなというのではない。化石燃料への依存は、その枯渇への対応が出来ない。利便性、効率性を求めすぎたために、本来の豊かさを忘却された人類を里山から救済する。

 

 PART2

 若者が都市部へ流出しきった自然消滅を待つばかりの山村地域から始まるように思えたが、現実は日本レベルでなく、世界で最先端のエネルギー革命の進む地域の話である。2011年から世間の関心がより顕著に向けられるようになったエネルギー問題は、様々な業界を駆り立てた。筆者も漏れることなく、化石燃料への依存者であるため、危機感を煽られた。岡山県真庭市にある銘建工業では、製材の工程で生まれるは材などの副産物を活用したバイオマス発電を行い。電力会社への売電をしている。バイオマス発電という単語は理科の教科書に載っていた記憶を参照すると、水辺の藻などを使用することを連想した。木材を使用した火力発電ではなく、あえて手間のかかるバイオマス発電を実現出来たことは初めて知見とした。

 これまでなんとなく田舎という場所を、古臭くて何もない、住みづらい等のマイナスイメージを持った場所として認知していた。便利で快適な都市部と比較して下に見るようなこともあった。しかしこの本を読んで、自分の知らないことが田舎で始まっている。世界を変えるようなエネルギー革命が起きている。都市部では化石燃料の枯渇を、指をくわえて見つめるだけである。そんな都市部の人間を置き去りにして独自の対応戦略を構築している里山を見せつけられている。

どちらが田舎だろうか。どちらが遅れているのだろうか。物事の優劣はその観測者に依存するが、筆者は少なくともこの最先端を見せつけられていることに劣等感を抱いている。時代の変革に適応する力が必要なのであって、例えば種の存続の危機の到来時に個の好き嫌いを述べている場合ではない。