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経済格差が中東にもたらしたもの

1.経済格差が中東にもたらしたもの

 石油ブームが一段落した後、貧しい国からの出稼ぎ労働者が自国へ戻った。そうした貧しい国はどのような状況に置かれたのか。それは出稼ぎ労働者からの自国への外貨送金がなくなり、国内に新しい失業者が出るという深刻な社会政治問題につながった。その結論として、産油国と非産油国の経済格差はその双方に不安定要因をもたらすことになった。

 2013年の一人当たりGDPが最も高い国はカタールで、同国のムスリム(イスラム教徒)人口比率は78%である。続く二位のアラブ首長国連邦には76%、三位のクウェートは86%のイスラム教徒がいて、いずれもアラブ国家である。日本はこれらの国と比べると、一人当たりのGDPはそれほど高くない。サウジアラビアの97%、ブルネイは52%と国民のほぼ半分がイスラム教徒である。バーレーン81%、オマーン88%、リビア97%、トルコは実践しているかはともかく統計上は99%、レバノン60%、マレーシア61%、アゼルバイジャン98%、イラン100%、イラク99%、アルジェリア98%、ヨルダン99%、チュニジア100%、モロッコ100%、イエメン99%、モーリタニア100%などの国がそれぞれ高いムスリム比率となっている。

 上記は一人当たりのGDPであったが、2017年の国別のGDPではアメリカが世界一位、中国が二位、日本が三位、以下ドイツ、イギリス、インド、フランス、ブラジル、イタリア、カナダ、ロシア、韓国の順となっている。

 2017年の一人当たりの購買力単価は、一位がカタール、以下マカオルクセンブルクシンガポール、と続き8位にアラブ首長国連邦、9位にクウェートが入る。日本はここで上位に入らず、アメリカが12位、15位サウジアラビア、26位オマーン、と続いて31位でやっと日本が来る。日本は国としては豊かであるが、一人当たりでいうと決して豊かとは言えないことがわかる。中東の国々を抜粋するとイスラエルが37位、トルコ55位、イラン68位、イラク79位、レバノン89位、ヨルダン114位、イエメン167位、アフガニスタン173位となっている。ちなみに世界で一番購買力の低い国は中央アフリカである。

 中東の国々における石油の確認埋蔵量は以下の通りである。

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2.経済面における産業優位

 イランはアメリカが石油輸出に対する様々な経済制裁を行っているが、やはり世界で二番目に石油の埋蔵量を誇るだけの影響力がある。サウジアラビアとイランはこれだけの石油埋蔵量があるために中東における覇権争いがあることが予想される。日本の石油輸入相手国は、1989年と2016年で変化があることから、世界の経済制裁に影響を受けていることがわかる。ベルリンの壁が崩壊し、ペレストロイカなどの影響から1990年5月にイエメンが統一しイエメン共和国の誕生がおこった。イエメンの統一によって経済面での産業優位に加え、それ以前の1987年4月に南イエメン北イエメンの国境地帯に良質の油田が3カ所発見された。

 このことによってサウジアラビアの反応は、南北イエメンの統一の阻止に動いた。サウジアラビアはこれまで北イエメン支配下に置いていたが、南イエメンは趣味が違った。統一し産業が優位になったことで都合が悪くなった。イエメン共和国の誕生がサウジアラビアの安全保障の直接の問題に関わってきた。従来サウジアラビアが握っていたアラビア半島の覇権が脅かされる脅威を抱いたためである。