学生の思想を読む

国ではなく国語に住む我々の、思考の差異を追求します。

中間レポート 2.自分史

この自分史を作成するにあたって明確にするべき目的は、当人の思考意識を確立し得た時点と、そのプロセスを明文化することにより、今後の多様な分岐点においての絶対値を制定することにある。事の背景として、高度な情報化社会における人類の思考力が衰える現象は、筆者も例外ではない。最新で最先端の情報にアクセスすることが容易である社会では、解答に行き着くまでの思考プロセスを最大限活用するスキルを必要としなくなった。自分が持つ信念はどのように発生したのか、その原点を知ることをしなければ、自身からの人間力の発動を以て行動に興すことは出来ない。

Re:queという人物の大きな転換期は、幼少期から青年期までの期間に及ぶ。その初動となる経験は、小学生の頃に遡る。ロボットや科学を好む友人に誘われた図書館で、太陽系の惑星が解説された図鑑を見せられた。初めて見る太陽系惑星の一つ一つを事細かに説明する友人に対して、神秘的な感嘆のみならず、自身のインプットした情報を他者へ発信する知識の本来の在り方を感じとったことを記憶している。この頃を期に宇宙飛行士といった、特殊な職業の在り方を目指すようになった。

中学生になるとより具体的な職業の選択肢が見えてくると同時に、現実を見るようになる。まず現在において直接的に宇宙飛行士として就職する口は存在しない。宇宙開発のメッカである米国やロシアにおいても、軍のパイロットや医者などからのキャリアアップといった形が主流である。そのために最初はパイロットや薬剤師を目指すようになったが、小学生と違うことは先見性を持つことである。平成初期からの科学技術の進歩は顕著なものであり、宇宙飛行士以外の民間人が宇宙へ旅行することも、資金面を除けば可能となる話がある。厳しい条件が存在するものの、現在は可能となった。そのような将来の到来を見越した上で、敢えて多額の投資を行って宇宙飛行士を目指すことが最善ではないと判断した。宇宙飛行士の業務は多岐に渡るが、確実に言えることは業務以外の例えば生理的な行動を含めたすべてが監視されることである。せっかく重力から解放されたとしても、地上からの監視の重圧に縛られるようでは、遊泳もままならない。民間人が民間人たる生活を、重力から解放された空間で送ることを目的とするのであれば、そこに投資をするべきである。当時の年齢に相応しい子供心をもっていた頃から続く筆者の信念として、隣の人間と同じことをすることを嫌った。全体主義を批判するとかの小難しい話ではないが、ルーティンワークの必要性を疑問とする気があった。人類はパスカルの言う葦でしかないかもしれないが、思考というものは武器になる。有形のモノ以外に価値を創生することが出来ることは、筆者の小学生当時の経験から自覚していた。

小田原総合ビジネス高等学校という、県立でありながら名称に仮名文字が用いられている校名に惹かれ、入学を決意した。校舎からバイパスを挟んですぐ海岸がある立地、男女比率が3対7、温泉地である箱根に近いなど様々な好条件に合致した高校での生活は楽しいものだった。商いに関わる知識で多少なりとも戦えるようになった。多様な女性との関わりを経験し人間の思考の不可逆性を学んだ。

人と違うことがしたいという類の発言は多く聞くが、その割に人と同じ行動に帰属している様を見ることも多い。重要なのはその一貫性の無さや矛盾、全体主義に対しての個人の無力感を嘆くことではない。当人がどの地点で落としどころを見出すかの判断にある。そのような事例を見てきた上で、筆者は近年のブラック企業であるとか、少子高齢化といった社会問題に対しての既存の制度に対する互換性の無さ、集団組織へのフットワークの重さを嫌う人間だと自覚している。下請けに実際の業務を丸投げし、自身は何のためになるでもない無価値な会議に徒労を費やすくらいであるならば、そのような企業は必要ない。勉学を努めてきた学生が、ソルジャーとしてルーティンワークをこなして一生を終えるくらいであるならば、筆者はそのような人生を送ろうとは思わない。またそのような生き方を良しとしない心を放置してはならない。そこに、筆者の人と違うことがしたいという思考の目的が存在することを明記して、筆を置くことにする。