学生の思想を読む

国ではなく国語に住む我々の、思考の差異を追求します。

古代オリエント博物館の特別展示「シルクロード新世紀」を見学して

1.その大まかな内容

旧石器、新石器、青銅器、鉄、ヘレニズム、古代末期時代の遺物が展示されており、ユーラシア大陸を横断する交易路であるシルクロード上に分布する遺跡から出土したものである。広大な地域を対象とするため、同一の目的を示す道具であっても形状や材質、目的に到達するまでの過程が異なる。文化の発展と交易の重要性を知ることが出来る。

 

2.そのうち特に興味深かった展示3点について興味を持った理由を含めて解説する

a.壁画断片(クローン文化財

アフガニスタンバーミヤン遺跡で出土した。この壁画は6世紀後半ごろに描かれたもので、大仏を荘厳していた壁画の一部である。クローン文化財技術という手法も用いて、実物の手触りを忠実に再現している。6世紀には唐僧である玄奘が巡錫したとされている。展示品は三つあり、そのうちの一つは顔の部分が盗掘されたのか、無くなっていた。盗掘痕のある遺物にのみ、裏面に英語表記の発掘場所などが記されたテープが添付されていることを確認した。クローン文化財という剥製品のため、数ある展示品の中でも実際に触れることが可能だったため、記憶に残った。

b.石核と石刃

イランのタル=イ・ジャリB遺跡で出土した、チャートを押圧剥離することによって成型された刃である。前5,500~5,000年頃に鎌の刃として使用された。農耕開始前後に出土する典型的な遺物である。原始的な石器と変わり人為的に作り出された人類最古の武器と言えるだろう。“典型的な”という表現から各地でも複数出土されていることを確認したが、刃の光沢の有無により、その石刃が既に使用されたものか未使用のものかが判断出来るという説明が印象的だった。

c.インダス式分銅

パキスタンで出土した分銅は商人の文明に強い影響を与えた。アジアなどにおけるこれまで使われてきた分銅には、模様などが施されておりインテリアのような印象を受ける。しかしこのインダス式の分銅はそれらと打って変わって文様や装飾などは一切施されておらず、大きさの多様な立方体である。前2,600~1,900年頃には既に西アジアでは異なる独自の十進法の重量単位が使用されており、単位の統一がされていたことが分かる。これまでの展示品は考古学らしい形状や雰囲気を放つものだったが、現実的で機能性に富む、異質な形状だったので選択した。

 

3.展示内容に対する感想・意見を記す。

時代ごとにブースが分けて展示してあり、参加した際には移動してゆくにつれ展示される遺物がより文明的なものに変わってゆく。まるで自身がその時代にタイムスリップしたような気分で見ることが出来た。上記で説明した三点が特に印象強く感じた。ユーラシアにおける文化や文明の交流に大きく貢献したシルクロードの広大さと影響力を視覚で体感した。旧石器時代などはどこの地域も、大きさや出土する素材に差異はあるが、似たような石器を使用している。文明が発達することにより地域ごとの特色が出てくることも確認できた。

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