学生の思想を読む

国ではなく国語に住む我々の、思考の差異を追求します。

チャップリン『モダン・タイムス』感想

【課題】

フォードシステムの特徴、意義と限界を論じ、HPにある「モダン・タイムス 」の感想を延べなさい。A4で一枚を目安で。

 

【回答】

フォードシステムは徹底した標準化とベルトコンベアによって単純作業を流れ作業で行うことによって生産性の大幅な向上を実現させる特徴を持つ大量生産方式である。

フォードシステムの意義は、大量生産システムの確立と本格的な展開が実現されたことである。ヘンリー・フォードが強い信念をもって開発したT型フォードは1500万台生産され、その結果フォード社は世界一の自動車会社になった。T型フォードの特徴は、運転しやすく修理も簡単で壊れにくく、悪路に強い。また実用性が高く、価格も安いため農民でも買うことができた。同時期にアメリカ南西部では世界一の油田発見が起こり、石油価格は水より安くなったことも、自動車の発達に寄与した。

フォードシステムには労働疎外と消費疎外という二点の限界がある。労働疎外とは労働を強制される、作業が無内容化する、作業強度が他律化するなど、労働者の働き甲斐が無くなることの表現である。誰にでも出来る労働とは、雇用者は簡単に労働者の入れ替えを出来る環境でもあるため、労働者は失業の不安を抱えることになる。消費疎外とは消費が他律化されることによって、過剰生産、恐慌、高圧的マーケティングを引き起こすことである。人間の消費活動において、何が社会的必要性なのかが不明瞭となる問題に起因する。

「モダン・タイムス」はフォードシステムによって起こる労働問題を取り上げた映画である。作中には様々な皮肉とも取れる暗喩が散りばめられ、当時の労働問題が表現されている。主人公チャーリーは大量生産を計るフォードシステムの非人間性の中で、人間としての在り方を手放さない。働くことを目的とした人生ではなく、夢や目標に向かう手段としての働き方をする。単純労働による職業病の弊害や、大量生産社会の在り方の是非について考えさせられる映画である。これを見て私は社会構造そのものの在り方が間違っている場合、どのように抗うべきか、そのレジリエンスを持つべきだと痛感した。その一つにその者の持つ人間性や柔軟な物の考え方が出来るようになるべきだと思い。またそれを行動に起こそうと考えた。

フォードシステムによって明確になったこれらの問題を、現代において社会と企業の課題として議論されている。具体的には大量生産と大量消費の結果に起こる大量廃棄をどう克服するかを考える必要が出てきている。よってフォードシステムは労働者の働き甲斐・生きがいという心理的な問題だけではなく、よりマクロな環境問題にも直結する要因となったシステムである。